最終更新日: 2023年08月29日
MOJI FACTORY ニッカウヰスキー 門司工場
福岡県北九州市、JR小森江駅を降りて線路沿いに歩いていくと、すぐに赤レンガ造りの巨大な倉庫群が見えてくる。これが1914年創業のニッカウヰスキー門司工場で、ニッカの工場となったのは2006年のことだが、前身は鈴木商店の大里酒精製造所である。
鈴木商店は明治7年(1874年)に創業した〝幻の総合商社〞で、門司の工場を創業した大正期には年商が日本のGNPの1割に達し、三井、三菱をしのぐ日本一の総合商社と言われたのだとか。門司港を中心とした関門海峡から小倉にかけて、工業用アルコール、石油プラント、製鉄業などの工場を次々と建設、日本の近代化・工業化の一翼を担ってきたが、1927年に倒産。ただし、ニッカの門司工場も含め、旧鈴木商店に端を発した企業は多く、日商岩井(現双日)や帝人、神戸製鋼、ニップン、Jオイルミルズ、ダイセルなどが名を連ねている。
鈴木商店の大里酒精製造所が焼酎を造り始めたのは1917年からで、1960年には協和発酵と合併。その後アサヒグループの一員となり、2006年からニッカウヰスキーの門司工場に。甲類焼酎や、甲類乙類混和焼酎の製品を造り続けている。代表銘柄は麦焼酎の「かのか」(甲乙混和)で、他に芋焼酎や米、そして麦やそばの本格焼酎も造っている。
門司工場が大麦(丸麦)原料のグレーンウイスキーを造り始めたのは2017年から。同じニッカウヰスキーのさつま司蒸溜蔵よりもスケールが大きく、蒸留器も同じステンレス製の焼酎蒸留器だが、サイズは10倍くらいある。さつま司が常圧の2回蒸留だったのに対し、門司は、初留は減圧、そして再留は常圧で行う。原酒は、さつま司のものに比べてより軽く、すっきりとしていて、洗練されている。それでいて麦の香ばしい香りがしっかりと感じられ、まさに「佳い香り」、佳の香(かのか)を彷彿とさせるエレガントな味に仕上がっている。
所在地 | 福岡県北九州市門司区大里元町2-1 |
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所有者(オーナー企業) | ニッカウヰスキー(アサヒグループホールディングス) |
創業年(会社設立年) | 1914年(鈴木商店 大里酒精製造所) |
ウイスキー蒸留開始年 | 2017年(ウイスキー) |
モルティング | 無 |
初留器タイプ/数/容量(張込量) | ストレート型およびローモンド型ステンレス焼酎用×計6基(常圧・減圧切替可) |
加熱方式:初留/時間 | スチーム |
再留器タイプ/数/容量(張込量) | - |
その他の蒸留器(ウイスキー・その他/タイプ/数) | 焼酎/単式蒸留、連続式蒸留(ウイスキー製造に兼用) |
ウェアハウス/貯蔵タイプ | 工場内レンガ倉庫の貯蔵庫 |
ボトリング設備 | 有 |
ビジターセンター/見学 | 無/不可 |
製品 | ウイスキー その他スピリッツ |
特記事項 | 関門海峡に面したアサヒグループ、ニッカウヰスキー焼酎製造の主力工場として、麦焼酎「かのか」(甲乙混和)、単式蒸留焼酎「一番札」、連続式蒸留焼酎「大五郎」ほかを製造。スピリッツ、リキュール免許も有する。ウイスキーはステンレス焼酎蒸留器(ポットスチル)で2回蒸留(初留減圧、再留常圧)を行って製造する。標高約0m、敷地面積約5万7,000平方メートル、延床面積約2万6,600平方メートル。 |
1914(大正3) | 鈴木商店の大里酒精製造所として竣工、稼働開始。 |
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1917(大正6) | 日本酒類製造に改組。焼酎製造を行う。 |
1925(大正14) | 肥後酒精㈱、大日本酒精㈱、島原西肥興行㈱を合併し、大日本酒類醸造に改組。 |
1948(昭和23) | 日本酒類・門司工場となる。 |
1960(昭和35) | 協和醗酵工業と合併、協和醗酵工業・門司工場となる。清酒、焼酎、梅酒、調味料などを製造。 |
1977(昭和52) | 乙甲混和むぎ焼酎「玄海」を製造開始。 |
1985(昭和60) | 焼酎「大五郎」を製造開始。 |
1990(平成2) | ミニペット充填開始。 |
1993(平成5) | 甲乙混和むぎ焼酎「かのか(佳の香)」製造開始。紙パックライン充填開始。 |
1994(平成6) | 製品立体倉庫が完成。 |
2002(平成14) | 協和醗酵工業が酒類事業をアサヒビールに分割譲渡し、アサヒ協和酒類製造門司工場となる。 |
2006(平成18) | ニッカウヰスキーとアサヒ協和酒類製造が合併、ニッカウヰスキー門司工場となる。 |
2009(平成21) | 灌水麴設備を完成する。 |
2010(平成22) | ウイスキー「ブラックニッカクリア」の瓶詰めを開始。 |
2013(平成25) | 「焼酎マイブレンド教室」(甲乙のブレンド等)を開始。 |
2017(平成29) | ウイスキー蒸留・製造を開始。 |
2023(令和5) | NIKKA DISCOVERYシリーズ第3弾、宮城峡蒸溜所、西宮工場、門司工場、さつま司蒸溜蔵の原酒を使った「ニッカ ザ・グレーン」(門司工場の原酒は大麦グレーン)発売。 |
2024(令和6) | ニッカウヰスキー創業90周年記念でニッカ関連蒸留所の原酒を使ったブレンデッドウイスキー「ザ・ニッカ ナインディケイズ」を限定発売。 |
更新履歴: | 2023年03月25日/8月29日 |
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