最終更新日: 2024年08月23日
SABUROMARU 三郎丸蒸留所
1862年創業の清酒蔵・若鶴酒造が開設した北陸初のウイスキー蒸留所。散居村の田園風景が広がる砺波平野に立地し、飛騨の山々から富山湾に注ぐ庄川の清冽な水で酒造りを行う。若鶴酒造がウイスキー造りを始めたのは二代目・稲垣小太郎氏のころ。戦後の米不足の時代に米以外の原料からアルコールを作り出す方法を研究していた小太郎氏はウイスキーに目を付け、蒸留器を日本蒸溜工業から導入。1950年に雑酒の製造免許を、1952年にはウイスキーの製造免許を取得した。翌53年春、「サンシャインウイスキー」を世に送り出す(現在も発売中)。その直後、火災に見舞われるなどの紆余曲折を経て、2017年に見学可能な蒸留所としてリニューアルし再出発を果たしたのが現在の三郎丸蒸留所だ。創業当時から日本では珍しいヘビリーピーテッドのスモーキーなウイスキーのみを仕込む蒸留所である。
老朽化した設備の改修にあたっては、クラウドファンディングで募った3800万円の支援金を充当。プロジェクトを主導したのは五代目の稲垣貴彦氏だ。ポットスチルは当初、焼酎用のステンレス製を銅製に改造して使っていたが、2019年6月に世界初となる鋳物製のスチルを導入。「ZEMON」と名付けられたこのスチルは、梵鐘などで使われる高岡銅器の鋳造技術をヒントに貴彦氏と老子製作所(富山県高岡市)が共同開発したもので、銅が約90%、錫が約8%含まれる銅錫合金製。2020年6月に特許を取得し、素形材産業技術賞・最高賞の「経済産業大臣賞」を受賞するなど、日本の伝統技術を用いた革新的なスチルとして国内外で大きな注目を集めている。また、発酵槽は2021年時点でホーロー製が4基、木製が2基あり、マッシュタンは2018年に半世紀使用していた自作の糖化タンクを三宅製作所製の最新のものに更新。2021年3月には長濱蒸留所(滋賀県)との原酒交換によって実現した、日本初のブレンデッドモルトジャパニーズウイスキーをリリース。さらにモルトヤマ(シングルモルトウイスキー専門店)との共同で「T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクト」立上げるなど、既成の枠にとらわれない試みが注目される。
所在地 | 富山県砺波市三郎丸208 |
---|---|
所有者(オーナー企業) | 若鶴酒造 |
創業年(会社設立年) | 1862年 |
ウイスキー蒸留開始年 | 1950年(ウイスキー製造免許は1952年) |
仕込水 | 庄川の地下水・硬度約60 |
麦芽のフェノール値 | ヘビリーピート50ppm、スーパーヘビリーピート80ppm、アイラピート、ノンピート(富山産) |
モルティング | 無 |
モルトミル | 4本ローラーミル(アランラドック製) |
ワンバッチ麦芽仕込量(マッシュレイシオ)/仕込回数 | 1トン/年約240回 |
年間生産能力(LPAまたはリットル[平均アルコール度数]) | 15万リットル(アルコール度60%換算)2022年度予想 |
糖化槽(マッシュタン)・濾過器/数/容量(張込量) | ステンレス・フルロイタータン(三宅製作所製・高岡銅器の銅板外装) |
麦汁量/麦汁糖度 | 5,200リットル |
イースト菌/添加量 | エール酵母、ウイスキー酵母併用/富山産の酵母 |
発酵槽(ウォッシュバック)/数/容量(張込量)/発酵時間/モロミ度数 | 木桶(日本木槽木管製オレゴンパイン)×2基/約6,000リットル、ホーロー(神鋼ファウドラー製)×3基/約7,000リットル/発酵96時間 |
初留器タイプ/数/容量(張込量) | ZEMONランタン型(老子製作所製)×1基/2,600リットル |
加熱方式:初留/時間 | スチーム直噴式とスチーム間接式パーコレーター併用/約7時間 |
冷却装置:初留 | シェル&チューブ |
再留器タイプ/数/容量(張込量) | ZEMONランタン型(老子製作所製)×1基/3,800リットル |
加熱方式:再留/時間/ミドルカット(度数) | スチーム間接式パーコレーターのみ/約6時間半 |
冷却装置:再留 | シェル&チューブ |
樽詰度数 | 60~63(標準60.5)% |
ウェアハウス/貯蔵タイプ | ダンネージ式、ラック式(5段)併用 ※蒸留所内、低温倉庫、第1貯蔵庫・合計約1,500樽貯蔵可能 、井波熟成庫(南砺市井波 ラック式 8段 5,000樽貯蔵可能、木造) |
ボトリング設備 | 有 |
ビジターセンター/見学 | 有/可(要予約) |
製品 | ウイスキー |
特記事項 | 年間を通じてスモーキーなウイスキーのみを仕込む。ZEMON(ゼモン)は銅錫合金(銅約90%、錫約8%、亜鉛2%)による世界初の鋳造の蒸留器。令和2年度第36回素形材産業技術表彰で最高賞「経済産業大臣賞」ほかを受賞。2020年に開発した新型ZEMONは分割構造を改良し、容量、ラインアームの角度のカスタマイズが可能となっている。宇奈月ビールの製麦施設を借り、富山県産大麦での製麦を実施。2021年、モルトヤマとの共同でジャパニーズウイスキーボトラー「T&T TOYAMA」設立。 |
1862(文久2) | 越中国砺波郡三郎丸村(現在の富山県砺波市三郎丸)において創業。 |
---|---|
1918(大正7) | 若鶴酒造設立。清酒「若鶴」「百楽」の製造販売。 |
1947(昭和22) | 若鶴醗酵研究所を設立。 |
1948(昭和23) | 日本蒸溜工業より蒸留器を導入。 |
1949(昭和24) | 焼酎製造免許を取得。 |
1950(昭和25) | 雑酒製造免許を取得(ウイスキー生産開始)。 |
1952(昭和27) | ウイスキー、甘味果実酒の製造免許を取得。 |
1953(昭和28) | 「サンシヤインウイスキー」発売。火災により初代蒸留塔施設を焼失、同年に再建。 |
1954(昭和29) | アロスパス式蒸留機を導入(~1980年代後半)。 |
2012(平成24) | 北陸コカ・コーラボトリングの傘下に入る。 |
2013(平成25) | 日本酒造りの大正蔵をビジターセンターに改修。「サンシャイン・エクストラスペシャル若鶴20年」発売。 |
2015(平成27) | 北陸コカ・コーラボトリングにより設立されたGRNホールディングス(現GRN:グローバル・レフレッシュメント・ネットワーク)の完全子会社となる。「サンシャインシングルモルト若鶴1990」発売。 |
2016(平成28) | 「三郎丸蒸留所改修プロジェクト」を開始。クラウドファンディングで4000万円近い支援が集まる。国内製品で最も長熟とされる「三郎丸1960シングルモルト55年カスクストレングス」および「三郎丸1994」を発売。 |
2017(平成29) | 改修整備計画が完了し、見学できる蒸留所となる。ステンレス製スチルのネック、コンデンサーを地元・高岡銅器の銅製に更新。オーナーのGRNホールディングスが社名をGRN(グローバル・リフレッシュメント・ネットワークの略語)株式会社に変更。「サンシャインウイスキープレミアム」「ムーングロウ・ファーストリリース」発売。 |
2018(平成30) | 自社製作の糖化タンクを三宅製作所製の最新式マッシュタンに更新。木彫りの里井波で地元・富山のミズナラ製の樽づくりを開始。「サンシャインプレミアムワインカスクフィニッシュ」「ムーングロウ・リミテッドエディション2018」「同クレセント2018」発売。 |
2019(令和元) |
世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON」を高岡銅器の老子製作所と共同で開発し設置。クラフト初の「ハリークレインズ・クラフトハイボール」発売。 |
2020(令和2) | 「三郎丸 0 THE FOOL」「同カスクストレングス」「富山スモーキーハイボール HARRY CRANES CraftHighball」発売。木桶発酵槽を追加。「宇奈月ビール」の製麦施設を借りて富山産大麦の麦芽づくりを実施。 |
2021(令和3) | 三郎丸×長濱蒸溜所コラボレーション・ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT FIRST BATCH」「同 SECOND BATCH」、ブレンデッド「玉兎 2021エディション」「三郎丸3年2017-2021ハンドフィル」「三郎丸蒸留所 ニューポット 2021アイラピーテッド+トヤマモルト 47ppm」「三郎丸蒸留所 ニューポット2021 スーパーへビリーピーテッド80ppm」「三郎丸Ⅰ THE MAGICIAN」「同カスクストレングス」発売。シングルモルトウイスキー専門店モルトヤマとの「T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクト」立上げ、クラウドファンディングの実施。4,000万円を超える支援を集めた。 |
2022(令和4) | 三郎丸蒸留所×江井ヶ嶋酒造のコラボレーション・ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT THIRD BATCH」「同 FOURTH BATCH」発売。南砺市井波にT&T TOYAMA 井波熟成庫を竣工。三郎丸蒸留所ほかの原酒をブレンドした同社の初製品、「THE LAST PIECE ジャパニーズエディション Batch No.1」「同ワールドエディション」発売。自社原酒のブレンデッド「三郎丸 THE SUN2022」「十年明Noir」「三郎丸Ⅰ for L'évo」、蒸留所限定「三郎丸蒸留所ブレンデッドモルトウイスキー Batch.1」、北陸コカ・コーラボトリング創立60周年および三郎丸蒸留所70周年記念、ZEMON蒸留器で造られた「The Founder 三郎丸2019 シンングルモルトシングルカスク」、「玉兎 2022 Edition」「三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTESS カスクストレングス」「三郎丸ニューポット2022 アイラピーテッド+トヤマモルト50ppm」、ハイボール缶「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」発売。「ZEMON」蒸留器、英国で特許を取得。 |
2023(令和5) | 「三郎丸ニューポット2023 ウルトラヘビリーアイラピーテッド83ppm」「シングルモルト T&T TOYAMA COLLECTION 三郎丸2019 3年 #190062」「三郎丸Ⅱ 70周年記念 スパニッシュオーク(ZEMONピンバッチ入)」「FAR EAST OF PEAT 5TH BATCH」発売。ロッテのクラフト酒チョコYOIYOの第11弾「YOIYO 三郎丸蒸留所 稲垣貴彦セレクション」として三郎丸ウイスキー原酒が選ばれる。若鶴酒造、木本硝子(東京)の共同開発で三郎丸蒸留所オリジナルのウイスキーグラス「The Ultimate Peat Glass」を発売。コラボレーションウイスキー「三郎丸×ペルソナ ブレンデッド」「同 シングルカスク三郎丸 P3P」「同 シングルカスク三郎丸 P4G」「同 シングカスク三郎丸 P5R」、アークシステムワークス社が展開する対戦型格闘ゲーム『GUILTY GEAR 』シリーズとコラボレーションウイスキー「GUILTY GEAR 25th Anniversary ブレンデッドウイスキー 25周年記念ボトル」「同シングルモルト ソル=バッドガイver.」「同シングルモルト カイ=キイver.」発売。「三朗丸 2019 3年 Whisky Festival 2023 in YOKOHAMA記念ボトル」「THE SUN 2023」「玉兎 2023 Edition」「三郎丸シングルカスク2020 3年」「三郎丸Ⅲ THE EMPRESS」「同カスクストレングス」発売。 |
2024(令和6) | 「GUILTY GEAR 25th Anniversary ブレンデッドモルト ディズィーver.」、(能登半島地震の被害に対して)「シングルカスク三郎丸 能登チャリティーボトル」、「FAR EAST OF PEAT 6th BATCH」、(4月3日台湾で発生した地震被害に対して)「シングルカスク三郎丸 台湾チャリティーボトル」発売。ブレンデッドウイスキー「FAR EAST OF PEAT 6th BATCH」、シングルモルト「三郎丸Ⅳ THE EMPEROR」「同 カスクストレングス」発売。コラボレーションウイスキー「真・女神転生Ⅴ Vengeance × 三郎丸 ブレンデッドウイスキー」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Devils #210115」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Angels #210011」「シングルモルト三郎丸 真・女神転生Ⅴ Vengeance Type:Lucifer #210160」発売。「百万石ウイスキーフェスタ2024 向け三郎丸ブレンデッドウイスキー」発売。代表取締役社長、稲垣貴彦氏著『ジャパニーズウイスキー入門 ~現場から見た熱狂の舞台裏~』出版。 |
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)受賞歴
<TWSC2020>
銀 賞 | 三郎丸ニューボーン2018 7ヶ月富山ミズナラヘッド/三郎丸ニューボーン2019 5ヶ月アメリカンホワイトオーク新樽/三郎丸ニューポット2019 |
---|---|
銅 賞 | 三郎丸ニューボーン2019 5ヶ月アメリカンホワイトオーク新樽(ベスト・ニューカマー・オブ・ザ・イヤー2020【ジャパニーズニューメイク】) |
<TWSC2021>
銀 賞 | 三郎丸0 ザ フール カスクストレングス/三郎丸ニューボーン2019 #19132ニュースパニッシュオーク/グレンマッスル ナンバー5 ファーストグロウス |
---|
<TWSC2022「三郎丸蒸留所」イノベーション賞>
金 賞 | 三郎丸 ハンドフィルド2018/ |
---|---|
銀 賞 | 三郎丸 Ⅰ THE MAGICIAN カスクストレングス/三郎丸 ニューポット2021 アイラピーテッド+トヤマモルト 47PPM |
<TWSC2023「三郎丸蒸留所」ツーリズム賞>
金 賞 | 三郎丸Ⅱ The high priestess |
---|
<TWSC2024>
金 賞 | 三郎丸Ⅲ THE EMPRESS |
---|
更新履歴: | 2021年9月10日/9月22日/11月29日/2022年5月20日/6月28日/8月16日/2023年3月31日/4月13日/6月28日/7月13日/7月25日/8月29日/9月19日/11月26日/2024年6月12日/6月17日/7月19日/8月7日/8月23日 |
---|
※当サイト内すべてのコンテンツの著作権は、ウイスキー文化研究所に帰属します。無断使用および転載は固くお断りいたします。