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ジャパニーズウイスキーの定義について
定義
2021-09-16
文/土屋 守
ジャパニーズウイスキーの定義について
ジャパニーズウイスキーの定義に対する私感
洋酒製造メーカー数10社が加盟する日本洋酒酒造組合が、2021年の2月中旬、そのホームページ上でジャパニーズウイスキーについての定義を発表した(4月1日施行)。日本には酒税法が定めるウイスキーの定義はあるが、今回はそれとは別に、ジャパニーズウイスキーとして認める製造上の基準について定めている。
ジャパニーズウイスキーにスコッチやアイリッシュ、アメリカンのような明確な定義が存在しないことはガロアでもTWSCでも、お伝えしてきた。日本には酒税法が定める定義はあるが、それは表示や製法について細かく規定したものではなく、そのため海外で「日本産ではない」ジャパニーズウイスキーが横行する温床にもなっていた。その問題点は、①原産国の規定がない、②熟成させていなくてもウイスキーと言える、③ウイスキー以外の醸造アルコールやスピリッツを90%まで混ぜることができる、という3点につきると、TWSCやガロアでも指摘してきた。
以前から、日本洋酒酒造組合が、定義案の策定に動いていたことは承知していたが、結論はまだ先と聞いていた。それがついにまとまり、2月の理事会の承認を得たことを正式に知らされた。すでにHPなどで発信されているが、同組合が組合内の内規としてまとめたジャパニーズウイスキーの定義について、ここで簡単に紹介しておきたい。
まずこれは「特定の用語の使用基準」ということになっている。それは「ジャパニーズウイスキー」と表示する、あるいは使用する際の定義であって、「ジャパニーズウイスキー」とあえて名乗らなければ、その限りではない。いっぽうでジャパニーズウイスキーと名乗らなくても、日本を想起させる人名や地名、名勝地、山岳や河川の名前を、ジャパニーズウイスキー以外のウイスキーに使用することを認めないとしている。そういう意味では、一歩踏み込んだ規定と言えるかもしれない。
では「ジャパニーズウイスキー」と表示するために求められる製造上の定義とは、どういうものだろうか。スコッチやアイリッシュの定義にならって、ここでは、箇条書きにして分かりやすく、列挙することにする。
ジャパニーズウイスキーの表示に関する定義
原料として用いてよいのは麦芽、穀類、日本国内で採水された水のみ。仕込みには必ず麦芽を使用すること。
糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸留所で行うこと。
蒸留の留出時のアルコール度数は95%未満とする。
熟成は容量700リットル以下の木製樽に詰めて、樽詰め日の翌日から起算して3年以上を日本国内において行うこと。
瓶詰めは日本国内において容器詰めし、その場合のアルコール度数は40%以上とすること。
瓶詰め(容器詰め)に際して、色調整のためのカラメルの使用は認められる。
以上が今回のジャパニーズウイスキーの定義だが、「後発である以上、先発のスコッチやアイリッシュの基準を超えるものを策定したい」と、洋酒酒造組合が意気ごむように、スコッチ以上にある意味、厳格な定義となっている。特に瓶詰めは日本国内においてのみ可とするという一文は、スコッチの先を行くものと言えるかもしれない。スコッチはシングルモルト以外、バルクで輸出して海外でボトリングしても、スコッチと名乗れるからだ(アイリッシュもアメリカンもどこでボトリングしなければという規定はない)。
熟成はアイリッシュやカナディアン同様、木樽を謳っているが、あえてオークとしなかったのは、日本には桜や栗、杉といった、まだまだ可能性を秘めた木材があり、その可能性を排除しなかったものと思われる(スコッチ、アメリカンはオークのみ)。瓶詰めも、あえて容器という表現を使っているのだとすれば、地球温暖化防止などを見据えた、いわゆるカーボンニュートラルに向けた未来志向の表現なのかもしれない。
この定義で、ひとつ問題があるとすれば、これは「ジャパニーズウイスキー」という特定用語を用いる際の定義であって、それを使わなければ(単にウイスキーのみとか、ジャパンメイドとか日本ウイスキーなど)、国税が定める現行法の定義で、90%までウイスキーではないものを混ぜることが、できるという点かもしれない。
これについては、なかなか難しい問題もあり、さらには、そもそもそれが日本のウイスキーが歩んできた歴史だとするなら、そう簡単に排除できないのかもしれない。いずれにしろ、今回の定義の持つ意義は決して小さくないと考えている。これによって、日本国内では流通せずに、海外市場のみで流通する、いわゆる自称「ジャパニーズウイスキー」を、胸を張って、「それはジャパニーズではない」と、言えるからだ。
日本のウイスキー100年の歴史にとって、これは真に画期的な出来事であり、この案をまとめた日本洋酒酒造組合の労を大としたいと思っている。
【初出: ウイスキーガロア Vol.25(APRIL/2021) 】
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