最終更新日: 2023年09月09日
IKAWA 井川蒸溜所
大井川の最上流にあたる静岡県最北端、南アルプスの山々に囲まれた標高約1200メートルの大自然の中に立地する日本一標高の高い蒸留所。運営会社の「十山」(じゅうざん)は2020年に設立。東証一部上場の製紙メーカー・特種東海製紙のグループ会社で、異業種からの挑戦として話題となった。蒸留所が位置する一帯は同社の社有林となっており、民間企業が所有するひとまとまりの土地として一世紀以上にわたり保護、その広さは日本一を誇る(2万4,430ha)。
初蒸留は2020年11月で、三宅製作所製のストレート型ポットスチル2基が稼働する。仕込みには南アルプスの湧水を使用。井川の大自然に磨かれたウイスキー造りを掲げ、南アルプス・オクシズ(奥静岡)の間伐材を活用した自社製樽のプロジェクトが進行中だ。初出荷は2028年頃を目指しており、長期熟成にこだわるという。貯蔵庫はラック式が1棟。アクセス困難な “秘境”の地で、静かにリリースの時を待つ。
所在地 | 静岡県静岡市葵区田代字大春木1299-1 |
---|---|
所有者(オーナー企業) | 十山 |
創業年(会社設立年) | 2020年 |
ウイスキー蒸留開始年 | 2020年 |
仕込水 | 南アルプス・大井川源流部木賊湧水(硬度約40度) |
原料大麦(品種/産地/メーカー・タイプ) | 英国産(クリスプ製) |
麦芽のフェノール値 | ノンピート/30ppm/50ppm |
モルティング | 無 |
モルトミル | 6本ローラーミル(ドイツ、キュンツェル製)×1基 |
ワンバッチ麦芽仕込量(マッシュレイシオ)/仕込回数 | 1トン(マッシュレイシオ1:4:3)/年約100回仕込 |
年間生産能力(LPAまたはリットル[平均アルコール度数]) | 約7万リットル(alc60%) |
糖化槽(マッシュタン)・濾過器/数/容量(張込量) | ステンレス・フルロイタータン(三宅製作所製)×1基/4,700リットル(約4,500リットル)/糖化3.5~4時間 |
麦汁量/麦汁糖度 | 5,000リットル(糖度14~15度) |
イースト菌/添加量 | ディスティラリー酵母、エール酵母併用/5kg |
発酵槽(ウォッシュバック)/数/容量(張込量)/発酵時間/モロミ度数 | ステンレス(三宅製作所製)冷却加熱調温機能付き×4基/6,000リットル(5,000リットル)/発酵約68時間 |
初留器タイプ/数/容量(張込量) | ストレート型(三宅製作所製)泡センサー・加熱強度コントロール機能付き×1基/6,000リットル(5,000リットル) |
加熱方式:初留/時間 | スチーム/約7時間 |
冷却装置:初留 | シェル&チューブ |
再留器タイプ/数/容量(張込量) | ストレート型(三宅製作所製)×1 基/3,000リットル(2,500リットル) |
加熱方式:再留/時間/ミドルカット(度数) | スチーム/約6時間/ミドルカット72~61% |
冷却装置:再留 | シェル&チューブ |
樽詰度数 | 約60度% |
ウェアハウス/貯蔵タイプ | 有/ラック式(5段)×1棟・約950樽貯蔵可能 |
ボトリング設備 | 無 |
ビジターセンター/見学 | 計画中 |
製品 | ウイスキー |
特記事項 | 蒸留所は静岡市内から一般車両が通行規制されている南アルプスの道を車で走ること約4時間半、南部登山の拠点である椹島ロッヂをさらに越えた二軒小屋へ向かう大井川沿いの「木賊」という場所に建っている(敷地面積は約2,000平方メートル)。木賊から湧き出る天然湧水は、100年以上前から人々の暮らしを支えてきた水と言われ、この地域一帯の管理水源面積(社有地)は国立公園、南アルプスユネスコエコパークを含む。会社では独自の自然保護区域を制定して厳格な管理が行われている。蒸留所では他社の原酒は使用せず、シングルモルトのみを製造する。ボトリング施設、試飲・ショップを計画中で、社有林の豊かな木材資源を利用したミズナラ樽の製作も始めている。 |
1895(明治28) | 創業者の大倉喜八郎男爵が2万4,430haにおよぶ南アルプスに位置する山林(現:井川社有林)を購入。 |
---|---|
1907(明治40) | 「東海紙料株式会社」を創立し、大井川の下流・静岡県島田市で事業を開始する。 |
1910(明治43) | 大井川の流れを利用した地名水力発電所が完成。製紙事業と共に地域産業の振興に寄与する。 |
1938(昭和13) | 井川山林施業計画案を作成し、国内における自主的民有林経営案の第一号となる。 |
1951(昭和26) | クラフトパルプ事業に進出し、社名を「東海パルプ株式会社」に変更。 |
1964(昭和39) | 井川山林の長野県境付近の高山帯など2,890haが南アルプス国立公園に指定される。 |
1979(昭和54) | 椹島ロッジ営業開始。井川山林西俣・東俣流域が南アルプス鳥獣保護区(10,827ha)に指定される。 |
2007(平成19) | 東海パルプ株式会社と特種製紙株式会社が経営統合し、「特種東海ホールディングス株式会社」を設立。100周年事業「南アルプス白籏史朗写真館」竣工式。 |
2010(平成22) | 特種東海ホールディングスが東海パルプと特種製紙を吸収合併し、「特種東海製紙株式会社」が誕生。 |
2014(平成26) | 井川社有林全域が南アルプスユネスコエコパークに登録される。 |
2018(平成30) | 特種東海製紙ウイスキー製造事業開始を決定。 |
2020(令和2) | 井川社有林を管理する特種東海製紙株式会社の南アルプス事業部が新設分割し「十山株式会社」を設立。山林管理とウイスキー製造を承継。ウイスキー製造を開始。 |
2021(令和3) | 南アルプス材(ミズナラ、クリなど)を使用した自社樽製作開始。 |
2022(令和4) | TWSC2022洋酒部門にて井川蒸溜所「ニューカマー賞」を受賞。ウイスキー「ニューポット」「ニューボーン」を静岡クラフトビール&ウイスキーフェア2022にて発表。19ヵ月熟成のニューボーン初製品「井川蒸溜所 NEW BORN Non-Peat 2022」発売。 |
2023(令和5) | ラボシリーズ 23ヵ月熟成ニューボーン「NEW BORN Peated 50ppm 2023」発売。 |
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)受賞歴
<TWSC2022「井川蒸溜所」ニューカマー賞>
<TWSC2023>
銅 賞 | 井川蒸溜所 ニューボーン2022 ノンピート |
---|
更新履歴: | 2021年9月6日/9月17日/9月27日/10月10日/10月27日/2022年6月28日/9月6日/10月14日/10月31日/2023年8月29日/9月9日 |
---|
※当サイト内すべてのコンテンツの著作権は、ウイスキー文化研究所に帰属します。無断使用および転載は固くお断りいたします。