最終更新日: 2023年08月29日
MIYAGIKYO 宮城峡蒸溜所
余市に続くニッカウヰスキー第2の蒸留所として1969年に創設。山形との県境に近い内陸の山あいに位置し、北海道西部の日本海に面した余市とは異なる立地上の性格を持つ。宮城峡の建設に際しては、この地を訪れた竹鶴政孝が付近を流れる新川(にっかわ)の水で「ブラックニッカ」の水割りを作り、蒸留所建設を即断したというエピソードが有名だ。緑豊かな山水美に彩られた宮城峡の景観はしばしばスコットランド北東部のスペイサイドにも喩えられ、余市の力強さとは個性の異なる華やかでフルーティな味わいを身上とする。現在は「ブラックニッカ」をはじめ、同社のブレンドを支えるグレーンウイスキーの製造拠点としての役割も担っている。
敷地面積は17万7600㎡と余市よりも広く、仕込水には新川の伏流水を使用。発酵槽はステンレス製が22基。蒸留器は8基(初留釜4・再留釜4)が稼働し、スチルは上向きのラインアームを持つ巨大なバルジ型(ボール型)だ。また加熱方式も、余市の石炭直火焚きに対して宮城峡ではスチームによる間接加熱を採用している。さらに特筆すべきは、今やスコットランドでも希少な存在となった旧型のカフェ式連続式蒸留機が使われていること。この蒸留機は1963年、当時の西宮工場に導入され、その後1999年に宮城峡に移設された。グレーンウイスキーだけでなくモルトウイスキー、ウォッカやジンの製造にも使われている。
ニッカウヰスキーでは創業100周年を迎える2034年に向けた取り組みの一環として、総額約65億円の設備投資を決定。2021年内に宮城峡・余市の熟成庫を1棟ずつ増設するほか(宮城峡の熟成庫は現在25棟)、2022年以降の原酒製造能力を2015年比で2倍以上に引き上げる見込みという。蒸留所見学も人気で、現在は使用されていない乾燥棟(キルン塔)や蒸留棟、赤煉瓦の熟成庫などが見学できる。
所在地 | 宮城県仙台市青葉区ニッカ1 |
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所有者(オーナー企業) | ニッカウヰスキー(アサヒグループホールディングス) |
創業年(会社設立年) | 1934年(大日本果汁) |
ウイスキー蒸留開始年 | 1969年 |
仕込水 | 新川の伏流水 |
麦芽のフェノール値 | ノンピート、ライトピート(4ppm程度) |
モルティング | 無 |
モルトミル | 5本ローラーミル(スイス、ビューラー製) |
ワンバッチ麦芽仕込量(マッシュレイシオ)/仕込回数 | A系6~6.5トン、B系9~10トン |
年間生産能力(LPAまたはリットル[平均アルコール度数]) | 500万リットル(モルト・グレーン) |
糖化槽(マッシュタン)・濾過器/数/容量(張込量) | ステンレス・フルロイタータン(ハップマン製およびチーマン製)×2基 |
麦汁量/麦汁糖度 | A系約3万3,000リットル、B系約4万8,000リットル |
イースト菌/添加量 | ウイスキー酵母数種類(25~30kg/基) |
発酵槽(ウォッシュバック)/数/容量(張込量)/発酵時間/モロミ度数 | ステンレス(大和ステンレス工業製)×22基(内訳:A系3万3,000リットル、B系4万8,000リットル 各11基) |
初留器タイプ/数/容量(張込量) | バルジ型(三宅製作所製)×4基(内訳:A系1万5,500リットル×2基、B系2万4,000リットル×2基) |
加熱方式:初留/時間 | スチームコイル(約130℃) |
冷却装置:初留 | シェル&チューブ |
再留器タイプ/数/容量(張込量) | バルジ型(三宅製作所製)×4基(内訳:A系1万2,000リットル×2基、B系1万8,000リットル×2基) |
加熱方式:再留/時間/ミドルカット(度数) | ヒートパン |
冷却装置:再留 | シェル&チューブ |
その他の蒸留器(ウイスキー・その他/タイプ/数) | カフェ式連続式蒸溜機(グレーンウイスキー、カフェモルトウイスキー用 英国ブレア製・コフィータイプ2塔式)×2セット |
樽詰度数 | 63~65% |
ウェアハウス/貯蔵タイプ | ダンネージ式、一部ラック式×26棟 |
ボトリング設備 | 有 |
ビジターセンター/見学 | 有/可(無料ガイド付き見学は要予約) |
製品 | ウイスキー ジン その他スピリッツ |
特記事項 | 敷地面積約17万7,600平方メートル、標高約230m。1976年に増設されたモルトウイスキーの製造は、A系、B系2つのラインに分かれる。グレーンウイスキーなどの製造用にカフェ式連続式蒸溜機を所有。西宮工場で1964と67年からそれぞれ本格稼働、1999年宮城峡に移設)。ほかにステンレス製減圧蒸溜機×2基、カフェジン製造用銅製ポットスチル(ジンスチル)×2基を所有。。NHK連続テレビ小説「マッサン」撮影に使われた初留釜(1,800リットル)の展示有。製樽工場有。ボトリングはニッカウヰスキー柏工場でも行われる。 |
1934(昭和9) | 竹鶴政孝、大日本果汁(現ニッカウヰスキー)を創業、北海道余市に北海道工場(余市蒸溜所)を建設。 |
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1940(昭和15) | 第1号「(レア・オールド)ニッカウイスキー」発売。 |
1969(昭和44) | 仙台工場(宮城峡蒸溜所)完成、生産開始。 |
1972(昭和47) | 余市、宮城峡、西宮、カフェグレーンの3つをブレンドした「ノースランド丸びん」発売。 |
1976(昭和51) | 仙台工場第二期工事完成。糖化槽、発酵槽、蒸留器4基を増設。製造工程を自動制御化、原酒の生産能力が2.5倍となる。 |
1989(平成1) | 「シングルモルト仙台宮城峡12年」発売。 |
1990(平成2) | 「オールモルト」発売。 |
1995(平成7) | 「モルトクラブ」「ピュアモルト宮城峡」発売。 |
1999(平成11) | カフェ式連続式蒸溜機を西宮工場から仙台工場へ移設。「ニッカ仙台30年」「シングルモルト仙台12年」発売。 |
2001(平成13) | アサヒビールと営業統合し、ニッカは完全子会社となる。仙台工場を宮城峡蒸溜所に名称変更。 |
2002(平成14) | 宮城峡蒸留所で「マイウイスキー塾」を開始。 |
2003(平成15) | 「シングルモルト宮城峡10年」「同12年」「同15年」「シングルカスク カフェグレーン1990」発売。 |
2004(平成16) | 宮城峡蒸溜所がSMWSのモルトウイスキー蒸留所に登録される(124番)。 |
2005(平成17) | 「ニュー・オールモルト」「ニュー・モルトクラブ」を発売。 |
2006(平成18) | 「モルト100ウイスキー12年 2006エレガントスタイル」発売。 |
2007(平成19) | 「シングルカフェモルト12年」発売。 |
2008(平成20) | 「シングルモルト宮城峡500ml」「ニッカシングルモルト・ヴィンテージモルト・シリーズ宮城峡」、宮城県限定「伊達」発売。 |
2009(平成21) | 「シングルモルト宮城峡1988」「同1989」発売。 |
2010(平成22) | 「シングルモルト宮城峡1990」発売。 |
2012(平成24) | 復興支援・宮城県限定として「伊達」リニューアル発売。 |
2013(平成25) | 「カフェモルト」「カフェグレーン」発売。 |
2014(平成26) | 「シングルカスク仙台宮城峡1990」発売。 |
2015(平成27) | 「シングルモルト宮城峡」「同シェリーカスク」(ノンエイジ)発売。 |
2017(平成29) | 宮城峡蒸溜所に新ビジターセンターを開設。「シングルモルト宮城峡モスカテルウッドフィニッシュ」「同ラムウッドフィニッシュ(欧米市場向け)」「カフェジン」「カフェウオッカ」発売。 |
2018(平成30) | 「シングルモルト宮城峡マンサニーリャウッドフィニッシュ」発売。 |
2019(令和元) | 「ウイスキー未来基地」をテーマとした蒸留所50周年の特別企画展の開催、限定商品の発売。「シングルモルト宮城峡2019リミテッドエディション」発売。 |
2020(令和2) | 「シングルモルト宮城峡アップルブランデーウッドフィニッシュ」発売。 |
2021(令和3) | NIKKA DISCOVERYシリーズ第1弾「シングルモルト宮城峡ピーテッド」発売。 |
2022(令和4) | 東日本大震災で被災した土地で栽培した「希望の大麦」を原料とするウイスキー原酒づくりを開始。「シングルモルト宮城峡グランデ」、NIKKA DISCOVERYシリーズ第2弾「シングルモルト宮城峡アロマティックイースト」発売。 |
2023(令和5) | NIKKA DISCOVERYシリーズ第3弾、宮城峡蒸溜所、西宮工場、門司工場、さつま司蒸溜蔵の原酒を使った「ニッカ ザ・グレーン」発売。 |
2024(令和6) | ニッカウヰスキー創業90周年記念でニッカ関連蒸留所の原酒を使ったブレンデッドウイスキー「ザ・ニッカ ナインディケイズ」を限定発売。 |
更新履歴: | 2021年9月10日/9月18日/2022年7月14日/8月21日/2023年3月9日/8月29日/11月27日 |
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