最終更新日: 2024年08月09日
SETOUCHI SETOUCHI DISTILLERY
清酒「千福」で知られる広島県呉市の三宅本店。150年以上にわたる日本酒、焼酎の伝統を踏まえ、2022年3月からウイスキー造りに乗り出した。瓶詰工場だった建物を利用して蒸留所としてオープン。瀬戸内から世界に向けて発信したいとの想いから、蒸留所名は日本語ではなく、SETOUCHI DISTILLERYと名付けられた。
計画からわずか1年足らずで生産を開始したが、それが可能となったのは、設備を納期の早い中国製で統一したからだという。モルトミルから蒸留器まですべて中国製で、それが工程順に壁の前に一列に並ぶ様は、スコッチのクラフト蒸留所を彷彿させる。
仕込水は自社の井戸から汲み上げた灰ヶ峰の伏流水で、ワンバッチは250㎏の極小サイズ。麦芽は英国産、オーストラリア産、国産のものを使い、2本ローラーのモルトミルで粉砕する。マッシュタンは容量1,000リットルのステンレス製で、糖化は4回に分けて温水を注入。一般的には一番麦汁、二番麦汁と分けて抽出するが、この蒸留所では4回の温水を加える過程で900リットルの麦汁を抽出し、それを発酵タンクに送るというシステムを採る。得られる麦汁の糖度は約15〜18度だ。発酵槽はビール用のステンレス製で容量1,000リットルのものが4基。酵母はドライの蒸留酒酵母やエール酵母などを配合し、900リットルの麦汁に対して500g投入する。発酵時間は1週間と長めの設定だ。
スチルはしばらくハイブリッドスチル1基で初留と再留を行っていたが、8月にバルジ型のポットスチルが到着。現在では、初留をポットスチルで、再留をハイブリッドスチルで行っている。蒸留もユニークで、通常のミドルカットではなく、留液全体が適切なアルコール度数になるまで蒸留を続ける。フェインティで重厚な香味が出てくるテール部分もある程度回収し、樽詰めの時に加水をしないという方法だ。
熟成にはオロロソシェリー樽をメインに使い、ラック式の熟成庫で貯蔵する。リリースは早くとも開設の3年後になるが、2022年4月からは「ニューポット瀬戸内」を販売、23年10月には「ニューボーンAGED 1 YEAR」の発売を予定している。
所在地 | 広島県呉市本通7-9-10 |
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所有者(オーナー企業) | 三宅本店 |
創業年(会社設立年) | 1856年(会社設立1925年) |
ウイスキー蒸留開始年 | 2022年 |
仕込水 | 灰ヶ峰伏流水で自社60mの井戸水(軟水) |
麦芽のフェノール値 | ノンピート |
モルティング設備 | 無 |
モルトミル | 2本ローラー型モルトミル(中国製)×1基 |
ワンバッチ麦芽仕込量/仕込回数 | 250kg(マッシュレイシオ1:4)/年間240回 |
年間生産能力(LPAまたはリットル[平均アルコール度数]) | 約1万6,000リットル(40%) |
糖化槽・濾過器/数 | ステンレス(中国、DYE製)×1基/1,000リットル |
麦汁量 | 900リットル/糖度15~18度 |
イースト菌 | ドライ蒸留酒酵母(ディストラMAX)、エール酵母他/500g |
発酵槽/数/容量(張込量)/発酵時間 | ステンレス・ビール醸造用(中国、DYE製)×4基/1,000リットル(900リットル)/発酵1週間(モロミ7~10%) |
初留器タイプ/メーカー/数/容量(張込量) | バルジ型(中国、DYE製)×1基/1,000リットル(1,000リットル) |
加熱方式 | スチーム/6時間 |
冷却装置 | 冷却塔 |
再留器タイプ/メーカー/数/容量(張込量) | バルジ型(中国、DYE製)×1基/1,000リットル(1,000リットル)+コラムスチル(5棚段)のハイブリッドタイプ1セット |
加熱方式/ミドルカット | スチーム |
冷却装置 | 冷却塔 |
樽詰度数 | 63.5% |
ウェアハウス/貯蔵タイプ | ラック式 |
ボトリング設備 | 有 |
ビジターセンター/見学 | 売店・ギャラリー有/可(蒸留所 見学不可) |
製品 | ウイスキー ジン |
特記事項 | 蒸留棟 延床面積935平方メートル、標高約15ⅿ。熟成はオロロソシェリー樽をメインに使用。 |
1856(安政3) | 創業し味醂、焼酎、白酒を製造。屋号を地名にちなみ「河内屋」と称す。 |
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1902(明治35) | 清酒醸造に着手。以降「呉菊」「呉鶴」「吾妻川」「吾妻川正宗」の各銘柄を発売。 |
1916(大正5) | 清酒「千福」を発売。 |
1924(大正13) | 全国に先駆けて四季醸造の「大正庫」を竣工。 |
1925(大正14) | 合名会社三宅清兵衛商店として会社設立。 |
1933(昭和8) | 満州国奉天(現在の中国瀋陽)に満州千福醸造を、次いで青島に東亜千福醸造を設立。 |
1939(昭和14) | 三宅本店に社名変更。 |
1940(昭和15) | 戦艦大和の進水式に海軍御用達の清酒として「千福」を納品。 |
1941(昭和16) | 中国の2工場と併せて酒造量が3万5千石(約630万リットル)となり、一時的に生産量日本一を記録する。 |
1945(昭和20) | 呉の大空襲で明治庫、大正庫ほか全社屋、酒蔵を焼失。敗戦で満州の千福醸造を失う。 |
1946(昭和21) | 昭和庫を完成。 |
1959(昭和34) | 池田勇人元首相が命名した「呉宝庫」が完成。 |
1970(昭和45) | 「千福一杯いかがです」のコマーシャル開始。 |
1980(昭和55) | 全国に先駆けて紙パック日本酒の「ふくぱっく」を発売。 |
1982(昭和57) | 日本酒「生酒」を発売。 |
2011(平成23) | 中国上海に新しい関連会社を設立。アジア各国での販売ルート強化をはかる。 |
2020(令和2) | スピリッツ免許取得、ジン製造開発に着手。 |
2021(令和3) | ジン・ウイスキー生産施設を設置。「クラフトジン瀬戸内 檸檬」を発売。ウイスキー製造免許を取得。 |
2022(令和4) | SETOUCHI DISTILLERY竣工式。「ニューポット瀬戸内」発売。蒸留器を増設。 |
2023(令和5) | 「ニューボーン瀬戸内 AGED 1 YEAR」限定発売。 |
TWSC受賞歴
<TWSC2022>
金 賞 | クラフトジン瀬戸内 檸檬 |
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<TWSC2023>
金 賞 | クラフトジン瀬戸内 檸檬(ベスト・コスト・パフォーマンス賞 ジャパニーズクラフトジン部門) |
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<TWSC2024「クラフトジン瀬戸内 檸檬」殿堂入り>
金 賞 | クラフトジン瀬戸内 檸檬(ベスト・コストパフォーマンス賞 【ジャパニーズジン部門】)/クラフトジン瀬戸内 甘夏 |
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更新履歴: | 2022年4月5日/8月22日/2023年7月5日/8月29日/2024年4月7日/8月9日 |
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